アニマルファンタジー【短編】

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 シルバーは視線を下ろして、怪我を負った箇所を見た。すると、驚いた事に、胸の傷は癒されており、失った足も再生していたのだ。  「ほんとだ!治ってる!」歓喜の声を上げた。「痛くないよ」  シルバーは何度も飛び跳ね、レイラの胸に飛び込んだ。  「お母さん、大好き」  「お母さんもよ」小さく笑った。「甘えん坊さんね」  花畑の中心でシルバーとレイラは光に包まれ消えていった。 □□□  生気を失ってしまったジュダはもうすぐ狩りの時間だというのに、レイラと愛を交わした木々の木陰で泣いていた。後悔の念に苛まれ、アルファとしての誇りをも失ってしまい、リーダーの座を息子のリランに奪われたままだった。  大粒の涙を零て顔を上げたとき、オッドアイの白い蝶と銀色の蝶が目に入った。二頭の蝶は羽を羽ばたかせ、ジュダの許に飛んできた。白い蝶は、ジュダの鼻先に留まり、銀色の蝶はジュダの大きな手に留まった。  亡き狼は蝶に姿を変えて地上に舞い降りる――――  ジュダにはすぐに誰なのか分かった。  「オッドアイの蝶……。レイラ……シルバー」  蝶に身を変えたシルバーとレイラの魂は、ジュダの周りを何度も飛んだ。  双眸から溢れる涙が止まらなかった。「シルバー、お前は母さんを連れてきてくれたんだね。父さんは生きているお前に逢いたかった。でも、ありがとう、ありがとうシルバー」ジュダは言葉を続ける。「幼いお前は一匹狼となり、立派に旅をしたんだな。シルバー、お前は小さなアルファだ」  ジュダに褒められたシルバーは嬉しそうに羽を羽ばたかせた。  ジュダはレイラの蝶に目線を下ろし、言葉を詰まらせた。  「すまなかった。心にもないことを言ってしまったことを俺は後悔している。愛しているんだ、レイラ。心から愛している」  レイラはキスをするようにジュダの口に小さな口をそっと寄せた。  レイラも愛していると伝えたかったのだ。  シルバーとレイラはジュダに愛を伝え、家族が集まる群れに飛んでいった。  ノントが宙を舞うシルバーとレイラに気がついた。  「あ!見てよ!みんな!母さんと、シルバーだよ!」  群れに喜びに満ち溢れた声が響いた。  リランの周りを何度か回った。その時、レイラの匂いと、シルバーの匂いがリランの鼻を掠めた。  「母さんとシルバーの匂い」  ノントが得意げに言う。
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