アニマルファンタジー【短編】

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 ――異国――  ここは、カナダ、オンタリオ州の森林奥地にあるアルファ雄ジュダの縄張りだ。  真冬の夜空には燦然たる星々が瞬き、仄かな蒼を帯びた月の光が白い大地を照らすと、雪の結晶がキラキラと反射し、まるで白銀色(しろがねいろ)の真珠を散りばめたように美しい光景が広がっていた。  生い茂る木々の梢は、葉の代わりに雪と艶やかな氷柱(つらら)を纏っている。梢が冷たい風に揺れる度、氷柱と氷柱がぶつかり合い、夜のしじまに透明感のある音を響かせ、大自然にシンフォニーを奏でた。  十一匹の狼を率いるアルファ雄のジュダが、粉雪が舞う大地に歩を進め、ほんの少し群れから離れた位置に立った。銀糸の毛が夜風に揺れて煌めきを放つと、群れ全体に威厳を与えるかのようだ。  青灰色の双眸で満月を眺めながら、ジュダはふと考える。
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