アニマルファンタジー【短編】

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 「もう出ないわよ。甘えん坊さんね。いつまでもおっぱいを欲しがるのはシルバーだけよ」  レイラは注意しながらも目を細め、シルバーの頬を舐めた。幼い兄弟の中でも特に甘えん坊のシルバーは、離乳した今でもおっぱいを欲しがるのだ。    シルバーが欠伸をした。  「お母さん、僕眠たいよ」  ノントもつられて欠伸をする。  「おいらも眠い」  ジュダが横になった。  「みんな、そろそろ寝よう。今夜の狩りに備え、体力温存だ」  群れは全員ジュダに返事を返す。  「はい。父さん」  彼ら狼は夜行性なので日中睡眠を取り、そして深夜狩りに出かける。いったん狩りに行くと、朝まで戻ることはなく、一晩中獲物を捜して走り回るのである。しかも狩りの成功率は10%以下なので、幾日も食事にありつけない事もしばしばなのだ。故、一度に沢山の食事を胃袋に収める事ができる。獲物は無駄追いはぜず、成功率を上げる為、なるべく子供の動物を狙うのが狼の狩りのスタイルだ。  深夜、ジュダが遠吠えで狩りの合図をだした。表情や遠吠えでコミュニケーションを図ることをボディランゲージ(身体言語又は非言語コミュニケーション)と云う。  狩りに出かける五匹の兄妹達はジュダの許へ。幼い子供達を守る為に留まる二匹の兄妹はレイラの許に歩み寄った  ジュダがレイラに言う。  「子供たちを頼んだ」  「ええ。心配いらないわ。狩りに専念してちょうだい」悪戯な笑みを浮かべた。「そろそろ鹿肉が食べたいわね」  苦笑いして答えた。  「できれば俺も鹿肉が食べたい。今日こそ頑張るよ」  とは言ったものの、今日の収穫はゼロ。仕方がない、よくあること。狩りに出かけた群れを責める者は一匹もいなかった。しかし、次の日も、その次の日も獲物を捕らえることができなかった。ジュダの群れは食事にありつく事ができずに十日が経過した。  コロコロとした愛らしい幼い子供たちが痩せていく。それなのに、お乳はもう出ない。レイラは子供たちが死んでしまうと、強い焦燥に駆られた。  そして、深夜になり、ジュダが狩りの合図である遠吠えをしたとき、レイラがジュダに声を張った。  「私も狩りに行くわ!」
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