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「レイラ、君が行っても無駄だ!狩りの腕も落ちているだろう。黙って子供たちを守ってろ!」
レイラは身籠ってから今まで、狩りはジュダと成体の子供達に任せていた。その為、数か月狩りをしていない。ジュダの言う通り、たぶん狩りの腕は落ちているだろう。だが、それを一番よく分かっているのはレイラだ。それでも幼い子供達に少しでいいから何か食べさせたい、と思う親心から狩りに行く決心をしたのだ。
「行くって言ってるでしょ!このままじゃ子供たちが飢えてしまうわ!」
「そんなの見れば分かる!お前は黙ってここに居ろ!狩りに着いて来られても迷惑だ!鈍った狩りの腕では邪魔なだけだ!」
ジュダも空腹だ。苛立ちが募り、思っている以上の事を強い口調で口にしてしまった。レイラにとってショックは大きかった。今までジュダに酷い暴言など吐かれた事はないのにと涙が込み上げたが、意地っ張りなレイラはムキになり、言わなければいい事を口にしてしまう。
「男なんかに任せておけないわ!役立たずの甲斐性なし!!」
ジュダは顔色を変え、声を荒立てた。
「なんだと!?もういっぺん言ってみろ!」
「何度だって言うわよ!」
初めて目にする両親の喧嘩に、幼い子供達は怯え、兄と姉の後ろに身を隠す。
シルバーが涙ぐむ。
「怖いよぉ」
すると、いつも狩りに同行するリランが溜め息をつき夜空を見上げた。
そんなに大声出したら、余計に腹が減るだけなのに……。
そして同じく、狩りに同行しているノントが余計な一言を言う。
「痴話喧嘩、空腹の狼でも食えやしない。な~んて。おいらウマいな~」
ジュダは鼻に皺を寄せ、怒りをあらわにし、ノントにじりじりと近寄った。
「黙れ」
ノントは慌てて仰向けになり、ジュダに腹を見せた。ジュダはノントの腹の上に乗る。ノントは歯を剥き出し、首を曲げた。ジュダのは怒りの表情だが、ノントのは服従のボディランゲージである。優位の立場に立つジュダの鼻を舐めっておべっかを使う。
「お、おいら、こんなにお父さんに服従してるよ。こんなにいい子いないよ。おいらは美味しいご飯を食べれたら、それでいいんだよ。おいらの事、怒るの?いい子なのに、怒っちゃうの?あ~、おいら可哀想。か弱い狼なのに」
ジュダは舌打ちし、ノントの上から立ち上がった。
共に狩りに行くオメガの妹が、ノントの耳元で言う。
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