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「余計なことは言わないのが利口でいい子なんだよ。ノントはおバカさん」
「うん。おいら気をつける」
ジュダは幼い子供達を外敵から守るために留まる成体の子供達に言う。
「わがままなレイラが子供達から離れる!しっかり守ってやってくれ。だが、くれぐれも気をつけるんだぞ」
子供達は声を揃えて返事する。
「はい。お父さん」
実際レイラは泣く寸前だった。ジュダの言うことに角がある。
お腹が空いてるのは皆一緒だというのに、まるで子供じゃない!いいえ、子供達だって我慢しているのに、ジュダは子供以下よ。
レイラは小声でポツリと言った。
「本当に最低よ」
「なんか言ったか?」
「別に」
仲睦まじい二匹は初めて本気で喧嘩した。一緒に狩りに行くというのに、ジュダの近くにいたくなかったレイラは、アルファでありながら先頭をゆくジュダから離れ、群れの一番後ろを走ることにした。
ジュダは時速三十キロで走りだした。狼は時速二十キロから四十キロで五時間以上走っていられるのだ。
久し振りに走るレイラは必死だった。体力が落ちていることに直ぐに気づいたが、ジュダに馬鹿にされたくないので涼しい顔で走って見せる。だが五時間も走破する自信がなかった。
足手纏いにはならないわよ!絶対に獲物を仕留めて見せるわ!
狼の縄張りは約百平方キロメートルから千平方キロメートルだ。ジュダの縄張りは約七百平方キロメートル。
彼ら狼は縄張り内で狩りを行うのだが、ジュダ達の縄張りは森林の奥地の丘陵にある為、右方には危険な断崖絶壁の崖が存在し、ジュダ達は崖に細心の注意を払い、狩りをする。万が一、崖から転落した場合、確実に命がないからだ。
ジュダの群れは幼い子供達が待つ位置から六百平方キロメートル隔てた場所で小鹿を発見したが、またしても逃げられてしまった。周囲にいた動物たちも狼の襲撃に逃げ惑い、命の危機と最悪の難から逃れようと必死に走り続けた。狼も喰わねば死んでしまう、動物たちも狼に捕らわれれば死を意味する。両者ともに真剣勝負なのだ。
レイラは崖の手前で混乱している野兎に目をつけた。
小さいけど、ないよりマシだわ。子供達に食べさせてあげたい!
レイラは全力疾走で崖まで走った。
ジュダがレイラに大声を声を張った。
「雪が解けだばかりだ!地盤が緩んでいる!危ないぞ!!」
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