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親につけられたこの名前は、散々ペンネームだろうとからかわれた。今ではもう慣れたものの、問題はもう一つある。
楠木乃輝は「生み出す者」ではない。しかし、その周囲にいる者ならば話は別だ。
作曲家、作詞家、小説家、画家、唄をたしなむ者もいれば活け花から建築に携わる者まで、楠木乃輝の友人の種類は多岐に渡っている。
しかも、そのすべてが「自称」であるというのだから、楠木にとっては頭が痛い。友人たちがそんな人間ばかりだから、楠木自身も周囲から同類と見なされてしまうのだ。
「楠木くんは、何を創るの?」
そんな質問をされたことも、十回、二十回ではくだらない。問うた少女に楠木は満面の笑みをもって返す。
「僕は何も作らないよ。僕は」
強調して付け加えた言葉と、笑みの裏からあふれ出るどす黒いいらだちに少女は怯える。
「ふ、ふうん……? そっかぁ、ご、ごめんね!」
顔をひきつらせて笑いながらも謝り、身の安全が保障されない小動物の如く逃げ出していったその姿。見送りながら笑顔で手を振り、舌打ちしたのは少女に向けてではなく、友人たちに対して。
「僕を巻き込むなって言ってんのに……!」
それからため息をつき、がっくりと肩を落として帰るのだ。
「僕はただの普通の人間だって言ってるのにさぁ。あいつらのせいで僕までそうだと勘違いされるじゃないか。本当にやめてほしい。ほんっとーにやめてほしい!」
「何をやめてほしいの?」
帰り道、いつもと同じつぶやきに、いつもはない声が反応した。
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