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目を覚ました時にはすでに自分の家だったが、どうやって帰ったのかは覚えていない。
翌日、学校で友人たちにそんな話をすると、案の定彼らは食いついてきた。
「乃輝! その話、もっと! もっと詳しく聞かせて! 私が素敵なファンタジーに仕立ててみせるから!」と自称小説家。
「その少女とやらの外観を詳しく教えてくれないか。創作意欲がわいてきた」と自称画家。
「さすが乃輝だ。お前と少女との邂逅はばっちりカメラに収めたぜ。いいものを撮ることができた……」と自称写真家。
「って、ちょっと待て。お前、昨日あの場にいたのか?」
穏やかに流しきれない発言に、楠木は友人たちの言葉をいったんさえぎる。
自称写真家は「おっと、いけない」と照れたように鼻をこすった。
「俺はいつだって乃輝の近くにいるからな。気にしないでくれ」
「いや、気にするだろ! おま、それストーカーっていうんだぞ!」
「ストーカーだなんてそんな」と頭をかく自称写真家。
「照れんな!」
白髪の少女より衝撃的な事実を知ってしまった楠木が呆然としているところに、教室のドアががらりと開いて、また一人友人が登場した。
眠そうな彼女は自称怪談収集家。
いずれこの学校の七不思議を作り上げることが夢なのだという。
自称小説家が興奮を抑えきれずに、その生徒に声をかける。
「七海! 大ニュース! 乃輝が白髪の少女と会ったって!」
眠たげだった彼女の目が、ぱっと大きく開かれる。
「白髪の少女? 乃輝、それは本当?」
先ほどから繰り返されるその問い、その会話に投げやりに返事する楠木。
「本当だって。だからこんなに大変な状況になってるんだろ」
すると、七海は感慨深げにうなずいた。
「そっか、大変な状況か。じゃあやっぱり、あの白髪の少女の話は本当だったんだ」
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