90(続き)

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「タツオのファーストキスもらっちゃった。さっきいったお婿さんの話、わたし本気だからね。じゃあ、また」  木の階段を駆け降りる小気味いいリズムの足音が遠ざかっていく。東園寺崋山(かざん)の「呑龍」を破る方法などあるのだろうか。タツオはその場に立ちつくし、先ほど目撃したばかりの東園寺家の秘伝について考えを巡らせ始めた。その間、無意識のうちにサイコの口を封じた人さし指で、タツオはずっと自分の唇にふれていた。
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