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「お兄ちゃんはこのメモを読んで決めたんだよ。3組のなかから暁島会の一派を一掃するって。それを浦上くんの弔(とむら)い合戦にする。決勝でタツオと当たって、タツオのこと一生残るほどの障害を負わせてやるって、五王くんに約束したみたい。予選のくじ引きにも細工(さいく)をしたんだって」
物干し台の上に立つふたりのあいだを、冷たい秋風が吹き抜けた。それでなぜかタツオの班は難敵ばかりと当たるのか。きっと東園寺派と五王派の猛者(もさ)ばかりなのだろう。
「わたしはいつかタツオが逆島の家をまた近衛四家に押しあげてくれるって信じてる。そうなったら、昔みたいにお兄ちゃんとわたしとタツオで、仲よく進駐官になれる。日乃元の国のためにいっしょに戦える」
なぜだろう、サイコが手すりを離れてこちらに近づいてくる。唇(くちびる)が動いていた。
「わたしは靖雄(やすお)おじさんが戦死したときから、ずっとそう思っていた。いつかタツオは帰ってくる。そのときはわたしとタツオが結ばれて、逆島東園寺連合をつくろう。わたしたちでお国のために、全進駐軍を動かしていこうって。わたしのお婿(むこ)さんになるのは、逆島断雄しかいないって」
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