第1章 午前八時の三角定規

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実は、つき合うこと決めた時、たった一言だけど、アキに反対されてる。 よく知りもしねぇ相手なんかやめとけ、って。 あの時は、そういう出会いから正常な発展をとげたお兄ちゃんやうちの親をかばう気持ちもあって、ぜーったいに大丈夫! と、啖呵切っちゃったんだよね。 いいかげんっぽいやつだけど、もしかしたら幼なじみとして、アキはアキなりにあたしを心配してくれてたのかもしれない。 あとせめて二か月くらいたったら、性格の不一致で別れたとかさりげなく報告しようー。  同じ方面に自転車で帰るのに、すっかりあたしのことなんて置いて行っちゃうマイペースなアキ。 あんなんで女の子とつき合って大丈夫かなあ、自転車をこぐ見慣れた制服の背中を見ながら考える。 アキの後ろ姿。あの背中が二等辺三角形に見えて、 「そうだ! 今日、学校で三角定規のセット使うんだったー」 と思い出して、朝の通学路を取りに引き返したことがあったよな。あれは中学の何年だっただろう。
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