第6章 北緯三十五度のトラウマ

57/59
733人が本棚に入れています
本棚に追加
/341ページ
それによく考えてみると、あれだけ過保護なお兄ちゃんが、お母さんほどあたしの閉所恐怖症を深刻にとらえてる節がない。 そのうち治んだろ、ヘタレめ、みたいな感じなんだ。 お兄ちゃんも、何も知らないのかもしれない。 思い出せそうな、気がした。何かを思い出せそうな気がした。 あのエレベーターの中で。 電車の轟音、狭い場所、あたしを力いっぱい抱く小さな身体。 時計を確認する。 こんな時間にまた外に出たら、お母さん、今度こそ送っていく、とか言いかねない。 明日だな。
/341ページ

最初のコメントを投稿しよう!