第1章 午前八時の三角定規

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 運命の恋は駅から始まるもの、それは三浦家の遺伝だと思ってた。  三つ違いのお兄ちゃん、今年からJリーグの仙台のチームに入り、家を出ていった三浦瞬は、彼女と通学に使う駅で知り合った。 うちの両親のなれそめも駅が出発点。 お父さんが電車内で書類をドアに挟まれ、降りなきゃならない駅のドアが反対側で困ってたんだそうだ。 お母さんは挟まれてる書類を、汗だくで引っ張ってるお父さんを手伝ってあげた。 それで次に同じ駅で会った時、お父さんはちゃっかりお母さんをお茶に誘ったって話。 礼儀としてそれは当然の行為だとか、お父さんは開き直っちゃってるけど、簡単に言えばそれは立派なナンパだ。 三浦家の遺伝は仲良しにも伝染するものなのか、お兄ちゃんの親友で、たぶんあたしが小学校中学校と淡―い想いを抱いていた駒形翔汰くんも、彼女と初めて絡んだのは駅だったらしい。
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