第1章 午前八時の三角定規

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 アキがあの大きい家に越してきたのは小学校入学の直前だったらしい。 もともとアキのお父さんの地元がこっちで、アキの入学を機に家を建てて戻ってきた、という話。 幼稚園の年長なんて立派に記憶には残りそうなものなのに、不思議なほどあたしはアキがここに来た頃のことを覚えてない。 いつの間にか近くにいた、って印象しかない。 あたしの三つ違いのお兄ちゃんは、小さい頃からサッカーが上手いことで有名で、特にちょっと歳下くらいの近所の男の子にしてみるとお手軽なヒーローだった。 アキは同じ年の洋平やヨクと一緒にたまにうちに来てお兄ちゃんと遊んでた。 お兄ちゃんが本格的にサッカーで忙しくなり始めた中学くらいからはそういう機会もだいぶ減っちゃったけど、それでもなんだかんだであたしたちは仲がよかった。
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