第1章 午前八時の三角定規

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 あたしに彼氏ができた時。 昔からアキは表だって熱くなることがない子だったのに、一言とはいえあたしに、よく知りもしねぇ相手なんかやめとけ、って言ったもんな。  今のアキはあの時のあたしと似てるのかな。 どこに遊びに行ったのかも知らないけど、たぶん気が合って、楽しかったから、つき合ってみよう、って判断したのかもしれない。  それとも……その一日で、すっかりはっきり、麻衣子ちゃんのこと好きになったの? 「へーんなのぉ……」  あたしは近くにあった枕を抱いて、くるっと向きを変えた。  新学期の違和感。違和感、か。違和感っていうより、得体のしれない喪失感とでもいうかな。
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