第1章 午前八時の三角定規

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それが三週間もたたないうちにこの結末。 「ガードだけはえっれーかてぇし! とかそこが一番問題なんでしょっ。ふんっ。ただのエロじゃんそんなの」 つき合ってくれ、と言ってきた三週間前の口調とは真逆なそれで、一方的に別れを宣言し、あたしに背を向ける皆川宏正。 あんたのがイメージ全く違うんだけど。 「あたしも軽率だったよね」 最初の印象はすごくよかったし、なんたって呼び止められた場所が駅だった。 友達から、って言ってくれたのもあって、軽い気持ちで交際オーケーしてしまったんだよな。 ほとんどお互いなにも知らないにも関わらず、すぐ手をつないできたり、やたらとボディタッチしたがる男だった。 喋ってお互い知り合うんじゃなかったの?  なんか違う、と思い始めてたところだったから、ちょうどよかったというのがあたしの本音だ。 手をつなぐ以上のことをしなかったのが今にして思えば不幸中の幸い、というか……。
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