第1章 午前八時の三角定規

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「でもたっかい勉強代だったー」  あたしは自分の右手のひらを見つめて眉間にしわを寄せた。初めて手をつないだ男があれか。 高校に入ったらお兄ちゃんみたいな素敵な恋愛がしたいな、っていうあたしの願望が、変に空回りしてしまった今回のおベンキョーだった。 これはあたしの中ですでに交際ではなく社会勉強。 仙台にいるお兄ちゃんやお父さんお母さんに、バレなかったのがせめてものラッキーだ。 もう高校生なんだから次は失敗しないで素敵な彼氏をゲットするぞー。 そう思ってあたしは駅のロータリー横から自宅に帰るための自転車置き場に向かった。 「振られたな瑠璃ぼうず」 「む?」 駅員の春ちゃんがにやにやしてこっちを見てた。 
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