第1章

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 時間より少し遅れてやって来たバスに乗る。駅で降りる人が多いためか中はガラガラだった。後ろに6人で陣取ろうとしたが、後ろはちょうど5人しか座れない。さて、どうしようか。  「ここは公平にじゃんけんで勝った人から座ろうよ」  二見が言うと、全員が賛成した。バスはゆっくり動き出す。  他の客があまりいないから多少は騒いでも良いのだが、さすがに学校の教室と同じノリでいく訳にはいかない。  「じゃんけん、ぽんっ」  チョキで一人勝ちした春澤に、「窓側とか一番当たりじゃん!」と水無瀬が吐き捨てる。ちょっとだけ悪そうに、春澤は後ろの席の窓側へ移動した。  「二回戦いくわよ!」  「望むところです!」  バスの中で響く、じゃんけんぽんの合図。何回かあいこを繰り返した後、椎原が春澤の隣を獲得した。  「あ、やったぁ。お先失礼しまーす」  椎原は笑う。スカートの裾を翻して、席に座った。残り4人、座れるのは3人。  「じゃんけん、ぽん!」  「うわ、やったぁ! さすが俺じゃね!?」  続いて水無瀬が真ん中の席につく。座れるのはあと2人だ。しかし。  残っていたのは二見と五反田と僕。女子を立たせるわけにはいかず、僕は一人で適当な席に座ることにした。後ろから聞こえてくる楽しそうな会話に参加できないのは悲しいが、仕方ない。
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