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「あ、藍島くん。おはよ」
待ち合わせ場所の駅前に行くと、制服のスカートの裾をいつもより少しだけ上げた、亜麻色の髪を二つ結びにしているクラスの女の子が居た。
「おはよう、椎原! 他の奴らは?」
「んー、まだ来てないみたい」
彼女が制服姿なのは、意味がある。僕らはこれから図書館に向かうのだ。制服を着た高校生なら、色々割引きが効いたりするのではないか。いかにも高校生らしい単純な発想だった。
「春澤くんも、二見さんも、めんどくさくなってドタキャン、なんてことはしないと思うんだけど」
薄ピンクのカバーがかけられたスマートフォンを細い指先で弄りながら、僕にそう話す、僕の見込んだクラスメイト椎原一葉(しいばら ひよ)。
成績もクラス2番で、大人しくて、汚れきった僕たちのような男子高校生を寄せ付けない清楚なイメージがある人だったがこうしてみると、普通の女子高生だ。
今日は土曜日、世間は夏休み真っ只中。朝だというのに駅前は人で賑わっている。僕は椎原にジュースを奢り、駅の中に入った。
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