第1章

5/9
前へ
/9ページ
次へ
 身長は、152センチくらいだろうか。  やたら人が多い駅に居てもピンポイントで気付くくらいの美少女は、僕たちを見つけるなりぱあっと笑顔になり手を振った。  三つ編みを揺らして駆け寄ってくる彼女の名前は、二見もなか(ふたみ もなか)という。肌が透き通るように白く、目がぱっちり大きくて、思わず目を奪われる。みんなからはもなかちゃんと呼ばれている彼女は、クラスでも人気なムードメーカー的存在で、正直忙しいところを誘っても良いのか不安だった。  クラスでの立ち位置とは裏腹に休日はほとんど誘われても遊びに行かない二見は、今日も「来れたら来るね~」と明らかに来れなさそうな雰囲気を醸し出していたのだが、どういう風の吹き回しか来てくれたようだ。思わず口元も緩む。  「二見! おはよう、来てくれるとは思わなかったよ」  「おっはよーっ。 なんか、新鮮なメンバーだったから、来ちゃった」  短いスカートの裾を靡かせながら二見は僕と椎原と春澤を見て言う。二見は声も甘くて脳が溶けそうになるが、意外としっかり周りが見えている奴だ。前もクラスでいじめが起きたとき率先して解決に当たってくれた。一部からは教師より信頼されているだろう。  「もなかちゃん、いつも来てくれないのに。レアだね」  椎原が驚いたように言う。指摘された二見は、「だって、休日は寝ていたいじゃん」と笑う。もしかしたら迷惑をかけてしまったのかもしれないが、優しい二見は僕たちに飴を配り始めた。サクマドロップとは、またセンスが渋い。  真夏の中顔を紅潮させて、二見にお礼を言ってイチゴ味を頂く春澤に、「私はこれが一番好き」と不人気の代名詞ハッカ味を摘む椎原。僕は迷った挙句コーラ味を一つ口に放った。  「ありがとね。二見さん」  椎原と話す時より余裕がありそうな春澤を見て、はてと思う。僕としては大人しくてあまり目立たないが、それなりに話しやすい椎原より、クラスでもキラキラした立ち位置にいる二見と話す時の方が緊張すると思うのだが。  そういえば椎原は成績が学年で春澤に続く2番目だが、追い抜かれる心配でもしているのだろうか。椎原の方は敵意も無いだろうし、これから大きな計画を実行する者同士仲良くしていただきたい。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加