第1章

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 さすがこの僕が選んだ面子である。誘った6人中、5人が来てくれた。残りの1人はクラス委員の女の子なのだが、彼女もかなり忙しいだろうし無理は言わない。常に敬語で話す、今時珍しい礼儀正しい少女だ。  「んでんでんで、俺たちなにすんのー?? 文化祭で、なんかやるってことはわかったけど!」  実は何をするかは、具体的には決めていない。高校生最後の夏になにか思い出を作りたいだけだ。適当に選んだ6人が、最高の夏の思い出でも作れたらいいななんて、そんな軽い考えだった。  犯罪者でもある僕は、これからは一生陽の目を見ることなく静かに生きるつもりだ。高校では大事に発展しても嫌なので隠し通していたのだが、社会に出たらそうも言っていられない。血縁者からは全員縁を切られたので身を粉にして働かなければ。  そんな僕の、最後の青春だ。  大学に進学するであろう椎原と春澤には申し訳ないが、どうせこの二人は余裕だろう。二見はどうするのだろうか。水無瀬は就職しそうだな。僕からしたら未来のある皆が少しだけ羨ましい。このままそれぞれの道を進み、結婚し、幸せに一生を終えるんだろう。  だから、せめて今だけは、最後に夢を見させて欲しかった。
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