男の悲劇

3/3
前へ
/3ページ
次へ
翌日、いつものように新聞を見ていた ふと、新聞の三面記事を眺めていると、 「若葉商事、破産申請へ」の文字が… 「へぇ、若葉商事が倒産かぁ…って、ええぇ!俺の会社じゃんか!」 見出しの横には「社員全員解雇へ」の文字が… 慌ててスーツに着替え、机の上にあったトーストを無造作に口に頬張り家を出た 「こりゃ、まずいぞ~」 駅まで走りながら、これから先のことを考えていた 駅に着き、電車に乗り込みいつものように揺られていく しかし、外のいつもの風景が今日はなんだか慌ただしく感じた 山王駅に到着し、走って会社に向かった すると、会社の玄関で大学からの幼なじみで同僚の菊池誠に会った 「おい、朝の新聞見たか?」 「うん、テレビでもやってたよ。でも、なんで若葉商事が…」 菊池が顔を強ばらせながら考え込んだ 「分からん。社長一族が会社の金を勝手に使ったとか?」 「いや、まさか…」 会話が続かなかった いつも通り入社すると、社内にはどんよりした雰囲気が漂っていた しかも、玄関には報道陣が詰めかけていた その日の午後、課長の嶋川に呼ばれ課長室に入った 「君も有望な人材ではあるが、周知の通りだ。ホントに申し訳ない」 言葉を失った… 朝、分かったとはいえ、課長直々に言われると重みが増してくる 夜、最後の給料を手渡しで渡され、帰宅しようとした時だった 菊池が後ろから声をかけてきた 「今夜はどこか飲みにいくか。もちろん俺の奢りで」 「うん…」 元気のない返事だったが、それは菊池も同じだった 線路沿いを歩き、いつもの居酒屋「小町」へ入った いつも頼む生ビールと枝豆の天ぷらで乾杯した 「今日の酒は悲しい酒だな…」 何だか涙が溢れてきた 酒の勢いと共に… 家に帰るのも辛かった
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加