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翌日、いつものように新聞を見ていた
ふと、新聞の三面記事を眺めていると、
「若葉商事、破産申請へ」の文字が…
「へぇ、若葉商事が倒産かぁ…って、ええぇ!俺の会社じゃんか!」
見出しの横には「社員全員解雇へ」の文字が…
慌ててスーツに着替え、机の上にあったトーストを無造作に口に頬張り家を出た
「こりゃ、まずいぞ~」
駅まで走りながら、これから先のことを考えていた
駅に着き、電車に乗り込みいつものように揺られていく
しかし、外のいつもの風景が今日はなんだか慌ただしく感じた
山王駅に到着し、走って会社に向かった
すると、会社の玄関で大学からの幼なじみで同僚の菊池誠に会った
「おい、朝の新聞見たか?」
「うん、テレビでもやってたよ。でも、なんで若葉商事が…」
菊池が顔を強ばらせながら考え込んだ
「分からん。社長一族が会社の金を勝手に使ったとか?」
「いや、まさか…」
会話が続かなかった
いつも通り入社すると、社内にはどんよりした雰囲気が漂っていた
しかも、玄関には報道陣が詰めかけていた
その日の午後、課長の嶋川に呼ばれ課長室に入った
「君も有望な人材ではあるが、周知の通りだ。ホントに申し訳ない」
言葉を失った…
朝、分かったとはいえ、課長直々に言われると重みが増してくる
夜、最後の給料を手渡しで渡され、帰宅しようとした時だった
菊池が後ろから声をかけてきた
「今夜はどこか飲みにいくか。もちろん俺の奢りで」
「うん…」
元気のない返事だったが、それは菊池も同じだった
線路沿いを歩き、いつもの居酒屋「小町」へ入った
いつも頼む生ビールと枝豆の天ぷらで乾杯した
「今日の酒は悲しい酒だな…」
何だか涙が溢れてきた
酒の勢いと共に…
家に帰るのも辛かった
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