― 宵ときどき屯所 ―

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 夜が明けきってしまっても、宵が帰ってこない。にも関わらず、『宵以外』を抱く、兄・夜に暁は乱暴に床を踏み鳴らして、問い詰めた。 夜 「だからだよ。『宵が帰ってこない』のだから、『宵以外』を抱くしかないだろう。あぁ、それとも『私と宵の情事』が見たかったのかい?……………『あの時』みたいに…………」 暁 「………あれは『不可抗力』///………て言うか、俺がいるの知ってて、見せ付けたくせにっ!!」 夜 「不法侵入している、お前が悪い。『牽制』したんだよ。お前、宵が『好き』だろう?」  暁の『宵を見る眼』を見ていれば、自ずとわかる。『欲』を孕んだ熱い瞳。それでも、秘めていたい『想い』。  暁は確かに、『宵を愛している』。けれど、告げるつもりはない。だって『報われる』ことがないのは、最初からわかりきっている。     ―宵は、夜しか見ていないのだ―  宵の、あの『黒曜石のような瞳』に映っているのは、いつだって『夜だけ』で。宵が愛しているのも『夜だけ』なのだ。     ―宵にとっては、『夜が総て』―  そんなこと、わかり過ぎるくらいに、わかっている。それでも、消せない『想い』なのだ。
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