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まだ完全ではないが、自分が白い世界に来たことは確かだった。
朦朧とした意識でもそれはわかった。
浮遊した感覚、両手足の感覚が自由に動く。
それだけで、白い世界にやってきたのがわかった。
しかし、今回はハッキリするのが遅いような気がした。
気がしたというより明らかに遅かった。
思い当たる節で言うと、いつもより動悸が激しかったくらいだった。
それが原因か?と、思っているうちに前方から人の気配がした。
「やあ、こんにちは。」
と、どこかで聞いた声だった。
目がまだ霞む状態であり、その声の主の顔ははっきりと見えない。
「あー、まだ落ち着いていないみたいだね。ゆっくりでいいよ」
穏やかな口調でその男は言った。
女ではないことはわかる。
「もしかして、朝の男か…?」
つい、疑問に思ったことが口から零れた。
「そう、正解だよ。何時間ぶりかな?」
意外にあっさりとした口調で返答した。
「そろそろ慣れてきたんじゃない?目も見えてきたでしょ?」
男がそう言うととほぼ同時に灰海の目は覚醒し、それまでのボヤが嘘のように消えた。
「やあ、初めましてだね。」
「ああ、初めまして。」
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