世界の救世主?

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男が最初に説明し始めたのは、灰海自身のことだった。 「君の本名は、灰海昇君であってるかな?」 男はニコニコしながら質問を問う。 はなから知っている風な口調で。 そうだ、と二言返事を返した。 それじゃあ…と、続いて質問が飛ぶ。 「君は数回かこの世界に来たことがあるよね?」 どうしてそれを?と言い出さんくらいの顔をしていただろう。 灰海は口には出さなかったが、目の前の男に対しての警戒レベルを一つ上げた。 「まぁまぁ、そんな顔しないでよ。それで、質問の続きなんだけど、いいかな。」 と、あくまで話のペースを握っているのはこの男で、灰海は質問に答えるしかできなかった。 「ここが、どこだかわかる?」 先ほどとは少し話の内容が逸れた。 「いや、わからない。ただ、この白い世界は俺に自由をくれたのだけはわかる。」 「君に自由を?それはどういう意味?」 興味津々と言った感じで、男が話に食いついた。 そこからは、灰海はこれまで経験したことを事細かに説明した。 自分が、奇妙な病気にかかったこと。 自分が、学校生活を余儀なくされたこと。 自分が、好きだったスポーツをできなくなってしまったこと。 それらをすべて話した。 「まぁこんなところだ。なんだろう、貴方には初めて会うが自分のことをこんなに話したのは貴方が初めてだな。」 そうなのかい?と、男。 さっき自分で警戒レベルを上げたばかりだったが、話している途中でそのことは忘れてしまっていた。 「そうか、それは辛かったね。」 神妙な顔で灰海に声をかけた。 まぁ、もう慣れたけどな、と灰海は別段気にしていないようだった。
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