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薄れた意識の中で、灰海は暖かいモノに身体を纏っていた。
ハッキリとした感覚はまだ戻っていないのだろう。
それが何かはわからない。
それにしても、最後に神様が何を言いかけていたのかが気になる。
が、どうにも転送されたショックが大きかったのか、または、それほど重要なことでもなかったのかうまく思い出せない。
そんなことを考えている内に、なにやら息苦しくなってきた。
徐々にだが、息が詰まる感覚に襲われる。
早くどうにかしなくては…!
どんどん息が苦しくなる。
その時だった。
ドッン!!
と、大気が揺れた。
次は何事だ、と混乱している内に視界が開けてくる。
「ぷはっあ!!」
上体を起こしてみると、灰海がいた場所はどうやら水辺らしい。
全身くまなく水浸し。
というより、もう少し起きるのが遅かったらそのまま窒息してたんじゃあ…と、血の気が引くのを感じられた。
辺りを見渡すと、木が乱立しており雑草が茂っていた。
見た感じは森林といったところか。
灰海がいたところは湖らしい場所。
とりあえず現状を確認しなくてはと、ゆっくりと両足で立った。
「本当に元通りになったのか…。」
両の足で立てることが本当に感謝できる瞬間だった。
しかし、感傷に浸っている場合ではない。
ここは異世界であり、なにが起こっても不思議ではない。
ザブザブと、湖の中心からある行く。
膝より少し高めだろうか。
そのあたりまでの浅い湖に、灰海は溺れかけていた。
パニックだったから仕方ない、と自分に言い聞かせながら陸地に上がった。
髪の毛と、服からは水が滴り落ちる。
無論、靴の中もぐっしょりしていた。
「こんなとこに転送しやがって…。」
少し、神様を恨んだ。
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