運命の夜 

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朝起きると、そこは見慣れた天井だった。 白い天井。 身体を起こすこともままならない程衰弱した自分の身体が忌々しく感じた。 しかし、そんな思考も、もうかれこれ何回したか覚えてすらない。 ふぅ、と深い溜息をついた。つきたくもなるってものだ。 コンコンコン 自分から左の方向で音がした。 「あら、おはようございます。今日はなんだか早起きですね。」 と、にっこり微笑みながら看護婦さんが入室してきた。 カツカツと小粋な音を出しながら、窓に近づき、一気にカーテンを開ける。 「眩しい…。」 太陽の光が流れ込む。 「ほら、今日もいい天気ですよ。」 他愛ない話だったが、病人にとってはいい話し相手になってくれる看護婦さんだった。 現在は朝の、7時40分ごろ。 いつもなら8時なんてとうに寝過ごしてしまうのに、今日は目が覚めてしまった。 正直わかっているつもりだ。 俺はもうそんなに長くないことぐらいは。
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