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急に白い空間が、割れる。
足元より遙か下から、まるで硝子のように。
世界が崩壊し始める。
声は、出せなかった。
落下するとき、あぁ、もう目が覚めるんだなと、悟ってそのまま重力に身を任せる。
カツンカツンカツン
高い音が響いた。
カツンカツンカツン
近づいてくるようだった。
「(誰かいるのか…?)」
正直驚きを隠せなかった。
だって、こんなことは初めてだったから。
今まで自分一人だけだったはずなのに、いきなり人影が現れることなど今までになかったのだ。
「今夜、君を迎え入れよう。それまで、さよならだ。」
中性的な声が脳内に響き、その男は笑顔でひらひらと手を振った。
灰海にはそれがまだ理解できなかった。
「うぅ…」
白い天井が目一杯に広がった。
あの世界とは違う、病院の天井だった。
ちらりと、ベッドの横に据えてある時を見る。
時刻は、午後の1時ほどだった。
朝ごはんを食べたのがだいたい、8時だったので5時間弱寝てしまっていた。
意識を落とすといつもこんな感じで、長時間寝てしまうことが多い。
今回に至ってはかなり長い方だった。
しかし、あの男いったい誰なのか?
顔は見えなかったが、声は聞こえた。
でも、その声は全く聞いたことはない声で、中性的な声だ。
何にせよ、あの白い空間、世界に初めて人が出てきたことに驚きだった。ふぅ…、と深い溜息をついた。
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