運命の夜 

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夕方5時頃。 今日は、白い空間に行くことは一回きりだった。 酷い日には、2回から4回ほど行くこともあった。 そのメカニズムは全くと言っていいほど解明されていない。 ただ、彼の体調や、精神の具合によるものと曖昧にはわかっている程度だった。 それでも、1日に1回は必ずその世界に引きずり込まれる。 しかし、それも今日で終わりのようだった。 だんだんと夜は近づいてくる。 いつの間にか、外は赤みを帯び、太陽はもう沈み切ろうとしていた。 夜の9時頃。 消灯の時間が迫ってきているのか、昼のような慌ただしい看護婦の声も聞こえない。 夜の病院と言うのは、基本的に閑静で静寂が支配するものである。 故に、灰海はそれがとても恐ろしく感じ、いつも夜は嫌いだった。 それは入院する前からのことで、今更だったが『病院』というステージで余計に苦手になった。 ぶっちゃけ、嫌いだった。 自室のカーテンを少し開ける。 今日はどうやら満月らしく、月が神々しい様である。 少しの隙間でも大変明るく照らされた。 彼の病室からは月がよく綺麗に見えるのだった。 数分してから灰海は床に伏せようとした。 瞬間、脳裏にあの世界にいた青年の言葉を思い出した。 ドクン 心臓が跳ねる。 ドクンッ 次は大きく跳ねた。 「はぁっはぁっ…!」 息が詰まるような感覚に陥る。 しかし、心臓の方はお構いなしに早くなる。 ドクンドクンと、止む気配はない。 次第に意識は薄くなり、すべてを放棄したくなった。 (あぁ、俺はここで死ぬのか…) それを最後に灰海昇の思考は停止し、彼は意識を放棄した。
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