第1章

16/72
前へ
/132ページ
次へ
【一宮side】 「あ?」 突然の声に振り向けば、ランはテーブルに腕をつき、冷え切った目でこちらを見ていた。 「山田って前にパクられたあいつでしょ?」 「知ってんのか」 山田は確かに暴行でしょっぴかれたことがあった。 ただ、証拠不十分ですぐに釈放された筈。 普通は知らねえ。 「私を誰だと思ってんのよ。 裏センターでは有名だったし、警察も目つけてるわよ。 アイツ、多分あんた達が思ってる以上に危険よ」 「は? 俺らが思ってる以上にって?」 ランの言葉に英治が眉間に皺を寄せた。 英治の情報網は半端じゃねえ。 俺らが掴んでない情報をランが知ってるわけねえ。 そう思ったのに……。 「捕まった後、この辺離れて繁華街で売人やって荒稼ぎしてたみたい。 金のためなら何でもやるし、キレたら手つけられないってさ。 それに知ってた? アイツ、何人も女の子壊してる。 言葉巧みに誘って、壊して、すぐにポイ。 水に沈められた子が何人いるか、わかったもんじゃない。 それなのに、その子見捨てる気?」 ランは静かに言い放った。
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10163人が本棚に入れています
本棚に追加