学び舎に降る血の雨

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『で、先生? 何の用で呼んだんですか?』 「なかったことにした!?」 『先生、何の用で呼んだんですか?』 「なかったことにした!」 有栖川日向はお互いに顔を見合わせると『何故か』目の前でテンション振り切ってる花ちゃん先生を冷たい目で蔑んだ。変な人だな。 今自分達は今日初めてこの質問をしたし醜態なんて晒してない、それでいいじゃないか面倒臭い。 自分達の冷ややかな視線でようやく空気を読んだ花ちゃん先生はぎこちない動作でコホンと一つ咳払い。 「────ま、まあ話を戻すね!」 花ちゃん先生はわざわざ再び椅子の上に立ちあがった。有栖川さんとは違いタプタプと色んなものが詰まった胸を更に強調する。 横から嫉妬とかそんな羨ましいものじゃなくゴミ虫を見る視線が突き刺さるがしょうがない。これはしょうがない。 「いい? 君達に足りないものそれは青春だよ!」 『はぁ……』 「迸る情熱! 爽やかな汗! 滾る若さ! 青春は今しか出来ないのにバイトなんかに時間を注ぎ込むなんてもったいないと思わな──」 『いいえ全く』 即答だった。むしろ花ちゃん先生が言い終わってないのにその言葉をぶった切っての返答だった。 「なんで!? もったいないよ!」 こちらも直ぐさま予想通りの反応が返ってくる。流石脳内花ちゃん先生、尊敬はしてるが軽蔑もしてる。 有栖川君と有栖川さんはバイトをしている。けれど本来この洛葉高校ではバイトが禁止されている。 確かに他のところに理由がない訳ではないが学校公認としてバイトをするにはそれなりの世間体のいい理由が必要なのだ。こんな勝手な理由ではなく、所謂現実的な家庭の事情という奴が必要なのだ。
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