学び舎に降る血の雨

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まあ、実際よく言われる。なぜなら自分と有栖川さんはよく一緒にいるからだ。 もちろん好き好んでな訳は無い。好き好んでな訳が無い。 ただ悲しいかな、有栖川日向は同じ人間だ。つまり有栖川君がフラッとコンビニに行きたくなった時、有栖川さんもフラッとコンビニに行きたくなる、そしてばったり出くわす。 思考パターンが気持ち悪いほどに同じなのだから今ここに行きたい、けど相手もそう思ってるだろうから……いや此処はあえて────とそんなフェイントを幾つ入れたところで結局のところそのフェイントの数すら全て一致してしまい意味をなさない。 最初はもちろん抗っていた、けれど最近は諦めの境地に達してしまった。だって回避不可の無理ゲーなんだから。 だから自分達は毎朝それぞれの家からちょうど同じ距離の交差点で出くわし、仲良く無言で学校まで登校。『有栖川日向』という全く同じ名前なので当然出席番号順に座らされる席も前後ろ。たまたまトイレに行きたくなる時も同じ、バイトも同じところに別々に申し込みシフトも殆どベッタリ一緒。 こんな示し合わせたかのような一日を示し合わずに毎日欠かさず行っているのだから気持ち悪い。つまり『有栖川日向』は朝交差点で会ってから夜バイトが終わるまでずっと一緒にいるのだ。 当然友達……と呼べたらいいよね!ぐらいの関係性を築いている人達には『付き合ってんだろー?』みたいな唾棄すべき低俗な質問もよく投げかけられる。その度に自分と有栖川さんはやんわりとした口調で断固として否定をしているのだ。引き攣った笑みを浮かべながら。 それは会話の流れなんかからある程度予測出来るからだ。けれど今は違う、完全な不意打ちだった。
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