花と実と甘い箱

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大好きな人が近くに居ます。 なのに姿がぼやけてきます。 「……泣かないで」 昨日迄の私ならきっととても嬉しくて、あの落ちていった蕾の開いた姿が見れたでしょう。 今日の私は、蕾を持たない今の私は。 「名前は、上田一樹」 「……」 「仕事はイラストレーター、一人暮らしで犬が一匹」 「……」 「歳は二十三、趣味はバイクとDVD鑑賞、性格は……マイペースかな」 深く、濃い緑色した瞳に私が映る。 「煙草とコーヒーは欠かせなくて甘い物は」 今日の私の、ぽろぽろ落ちてしまうものは。 「あー、泣くなって。甘いのは苦手だから」 ぐっと瞬きしたら、少しだけクリアになったあなたが映りました。 「一緒に……食べよう」 「……ぇ」 瞼まで、固まってしまって動けません。 「昨日の、一緒に食べよう」 涙腺だけが、働きます。 今日の私の零れるもの。 「君の名前を教えて欲しい」 「……っ」 最初哀しくて後からずっと嬉しくて。 「俺のこと知って、まだ大好き?」 「……っふ」 挟まれたままの頬、小さく頷いたら。 嬉しくて嬉しくての涙が止められなくなりました。
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