花と実と甘い箱

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――夕方、五時四十分。 「お帰り、チャコ」 「……帰りました、一樹さん」 週四回は、毎日になりました。 「勉強したか? 大学、行けそうか?」 大好きな人が、沢山の言葉を私にくれます。 「まぁ、もし受からなかったら」 「……?」 大好きな人が、深い濃い緑色した瞳で見つめてくれます。 「……俺のお茶くみになるって選択もあるから」 「お茶くみ……?」 「鈍感」 あの蕾は咲かなかったけど。 「今、花のイラスト描いてるんだ、見においで」 「花?」 「そう、花」 蕾は一つだけではなかったようです。 「チャコ……お前、笑うと花みたいだな」 大事に大切に育てたあの想いは。 「花みたいなチャコを、見つけられて良かった」 花になって、実になります。 「大好きだよ、チャコ」 この先は……あなたの傍で育てます――。 ――fin――
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