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勇気の欠片を握り締め。
夕方、五時四十分のコンビニで。
週に四回のあなたに向かいます。
「あのっ」
「……君、何か」
頑張れ私、頑張って蕾。
「……っ、こ、こんばんは!」
「……」
あ、れ。
あれれ。
ドキドキが、朝よりも激しく暴れ出します。
「ぁ、の……、こん……ばん、は……」
その中で、どこにあったのか現れた刺が、つん、と顔を覗かせました。
ドキドキ、バクバク……ツキン。
見えない刺が、胸の中でチクリと動きます。
茎が、葉っぱが、お日様から隠されて。
くたりと下に俯きました。
「クスッ……こんばんは」
「……えっ」
「こんばんは」
風が流れ、雲が晴れて、もう一度お日様が映ったら。
「……っ、ハイッ、こんばんは!」
「クスッ、こんばんは」
くたりと俯いた茎はシャキンと伸び、下を向いた葉っぱはピンと緑を色濃くして。
嬉しくて、幸せで。
きっとあの種の中には、虹色の花が隠れている。
きっと虹色に咲いた花の付け根には、万華鏡の中みたいな実が隠されている。
大事に、大切に。
花になれ、実になれと。
毎日、毎朝、そして夕方の週四回、私は何度も声をかけ続けます。
あなたに、私の中の、小さな苗に。
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