第一章

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 「で、敵潜は撃沈したのですか? 」  「いや、残念ながら、そのまま深深度潜航に入ってしまった。何度か潜望鏡らしきものを確認したようだが、決定的な位置はつかめぬままだ」  パラワン水道は、かなり狭い海域だった。敵潜水艦の情報が入り、直進するとは言ったものの、いつでもゼロカンを飛ばせるようにと、ちょうど固定ロープを外し、腕に巻きつけていたところで、あの爆発に巻き込まれた。  レイテ侵攻作戦は、多方面同時進行作戦と聞いていた。詳しい話は聞かされていないが、我々本体と同時に、四方向から侵攻すると言っていた。一隊は、囮部隊として島の北東から潜入したはずだ。  本体が遅れてはならぬと、栗田艦長もそのまま狭い海峡を直進する選択をしたのだろう。  それが裏目に出てしまった。  「愛宕の乗組員は……皆、無事でしょうか? 」  「多くの犠牲が出た。残念だ。君のいた中央部は、真二つに折損してしまった。近くにいた乗組員は殆どが海に飲み込まれたようだ」  そうか、同僚たちは殆ど逝ってしまったのだな。  口ではお国のためと言ってはいたものの、正直なところ、俺の知る同僚たちで独身の連中は、あたかも戦国武将や、維新軍にでも成りきったかのように、戦負けなど考えられない。ただ、それだけで血気が踊っていただけだった。  家族持ちは、逆に妙に冷静で、只々、国にいる家族を本当に守りたい一心で戦っていたのだと思う。  悔しさを通り越して、不憫さすら感じる。妙な感覚だ。
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