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二年に進級して数日、同じクラスになった後藤さんを校舎裏に呼び出した。冬服のスカートの下にジャージをはいて、いつものように前髪を縛っている。まる出しの額には何も書かれていない。
「ちょっと待ってろ、すぐ戻る」
後藤さんは、告白の言葉にはとくに驚きもしないで、それだけ言うと走り去った。
何を待てばいいのか。告白の返事を待てということなら、ひと晩考えさせて、とでも言うだろうし行って戻ってくるあいだに誰かに相談でもするのか? ……ないな。後藤さんにかぎってそれはないわ。だいたい、本人を待たせている状態で、『いま答えてすぐ答えて』と相談されても困る。おれならまず、告白してきたその人を家に帰してやれよって言う。
ほどなくして戻ってきた後藤さんはその手にエレキトリックギターを持っていた。
おれが動きを目で追っているなかで、おもむろに押しつけられる。
受け取ってしまった。
「な、は、何これ?」
「フィクシィ社製、プルートゥ。私の初代愛器だ、名前はツネクレ」
「いやそういうことを聞いているんじゃなくて」
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