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髪も目も肌の色も違う大男が無言でギターをかき鳴らす様はとても目を惹いたのです。
そんななか、ぼそりとつぶやかれるひと言がありました。
「ボーントゥシングか」
それはまさしくジャックが弾いていた曲の名前でした。それを紡いだ口の持ち主は自分より頭ふたつもみっつも低いような女の子でジャックはひどく驚きます。思わず演奏の手をとめました。
「Do you know this?」
「なにいってっかわからんけど――まあ、その曲は知っているよ、おとうさんがよく聴いている。というか日本語で言え日本語で、ここは日本だ」
「oh……スミマセン、」
「それでいい」
小学生くらいの女の子は頭のうえでしばった毛のふさをゆらしながら満足そうにうなずきます。しかし、ジャックが日本語で知っているのは簡単なあいさつくらいなものでした。それだけでは円滑なコミュニケーションをとるのは難しいでしょう。だから、だめでもともとと、英語でなんどか問いかけましたが意思の疎通はできません。そこで、ふと気づきます。
自分が手にしているものの正体にです。
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