#00.born to sing

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 ジャックは演奏を再開します。もっと原初のコミュニケーションの手段として音楽を用いたのです。 「Hey let's sing!」  少女は歌います。それは歌詞こそめちゃくちゃでしたが、音程も声量もタイミングの取りかたも申しぶんのない歌唱でした。  Amazing!  ジャックのなかにあったのは感動でした。旅をしていてよかった、と強く感じました。  ひとしきり歌い終えて、少女は周囲の子供たちにはやしたてられて頬をかきます。ふと、つけていたヘアゴムを外すとジャックに差し出しました。 「やる」  ジャックは大きな手のひらで受け取ります。代わりに彼は持っていたピックを差し出しました。 「ヤル」  少女は楽しそうに笑いました。 「え、えと、さ、さんきゅー」 「oh、アリガト」  少女は親によばれて去り際に言います。 「つぎはちゃんと日本語を覚えてから来い。というか日本語の歌も作れよ! お前、才能あるよ! じゃあなー!」  少女があからさまに人を褒めたのはこれがはじめてのことです。しかし、少女とジャックがふたたびまみえることはありませんでした。 「ジャーナー!」
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