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ルーチンズに在籍中、ジャックは音楽家としてユリシーズを愛していました。『born to sing』はギタリストであるジャックがボーカリストであるユリシーズを想って書いた曲なのです。
再会したジャックは、あれはくだらないいさかいだったと謝罪をします。
ユリシーズが描こうとした絵があって、そして彼には膨大な種類の絵の具が与えられていた。それを使って美しい作品を仕上げようとしたにすぎないのだと、ジャックは理解したのです。
自分の持つ色は褪せてしまって、彼がほしがっていた色ではなくなったのだと受け入れたのでした。
創作に関して妥協をゆるさず、理想を追い求めるユリシーズの姿勢は好印象に映りました。
そんな彼に力を借りたいと思ったのです。
『おれは、生み出さなければならない。それにはおまえの力が必要だ。おれの才能は枯れているのでな』
『俺はな、ジャック、人のパフォーマンスやその作品の魅力を倍増させてやれるという自負がある。しかし、ゼロは倍にしたところでゼロなんだ』
ジャックは食い下がります。
『おれは残さなくてはならない! できあがったものがゼロでもいい! かたちだけできていて中身がなくてもかまわない! おまえとともにガワだけでも、つくられればそれで充分なんだ!』
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