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#01.青き奏唱哲学
体育館は、ジリジリと長さを減らしていく導火線の様相で爆発の瞬間を待っていた。
これから始まるのは、このオンボロ校舎の県立高校には似つかわしくない、歓声と狂喜に満ちた数十分間だ。この数十分間のために、高校の内外問わず観客が押し寄せていて、熱気に満ちた空間はかすかなざわめきをたたえていた。
文化祭なのだった。
わが校の軽音楽部二大バンドといえば、まったく興味がなかったおれの耳に飛び込んでくるほどに校内の話題の中心となっていて、それならばひとつ聴いてみるかと足を運んだわけである。
それまで演奏していた軽音楽部の面々がはけてから、会場の空気が一変したのがわかる。
機材の搬入を終えた実行委員らが袖へと消えていってからもう五分、時計を見ればそろそろ開始の時間である。やがて姿を現したのはガールズバンドのほうだった。
ホノアカクサクという名だとプログラムに載っている。
歓声のなかで、ボーカルらしき、白髪をところどころ桃色に染め抜いた派手な頭の女子生徒が舞台の中央へ歩いていく。
観客に向けピースサインとともに、にこりと笑みを浮かべて、歓声がひときわ高まったときである。
まるでその歓声を待っていたようなタイミングだった。
ボーカルのとなりをすり抜けながら、その女はステージの真ん中に飛び出した。
「声援ありがとうッ!!」
『お前へのじゃない』といったいなん人が思ったことだろう。
アコースティックギターを肩に乗せて学校指定のジャージのズボンをはき、上は見たこともないようなシャツを着ている。
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