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怒涛の春休みが終わり、怒涛の新学期が始まった。
「え、え、えぇぇぇぇぇ…!!!」
今しがた、作戦会議中に葵にした意思表明。
それを聞いた葵が大きな目をますます大きくさせた。
「そ、それ…っ、本気で言ってるの!?」
「本気だ…ッ…、じゃなくて本気よ!」
「“よ”っ!? “よ”ぉぉ!?」
オレの口調を聞いて、葵が身を乗り出す。
ここは、いつものように視聴覚室。
春の木漏れ日が敷かれた絨毯に降り注ぎ、ぽかぽかとしていて気持ちがいい。
桜の木にウグイスがやってきて…。
ホー…
「本気!?」
葵がオレの肩を揺すった。
「だって!今までずぅぅぅっと“漢”を目指していた友クンが、まさか“女の子になる”って言いだすなんて!!」
葵は手のひらに顔をうずめて、感激のあまりか泣いている。
そんな泣いて喜ばれるほどのことだろうか。
「だってよ…、“漢”目指したところでアイツには勝てねーんだもん。女になってアイツをギャフンと言わせるしか方法は………
あ、はいはいはい。女になって、倉森くんを驚かせるしか方法はないと思ってこう致すことにしたでございます」
葵の辛辣とした視線が飛んできたので、訂正した。
「ま、動機はさておき。友クンが女の子になるってのは大賛成。友クン、モトは凄く可愛いんだし、すぐに女の子になれるよ!」
そう言うと、最近常備しているミニポーチの中から何かを取り出した。
「ってことでお化粧しよ~!!」
「えっ!!」
葵がその気になっている。
「ちょ、ちょっと待て…!」
「待て、じゃないでしょ?友ク…、あ。友ちゃん、待ちなさい!!」
「ヤダ~~~!!」
化粧は嫌だ!
顔がかゆくなる!!
「待て~~~~!!」
視聴覚室を飛び出して、追いかけっこになった。
足の速いオレが、葵に捕まるはずがない。
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