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「はァ!?」
葵の言葉を聞いて、オレは大きく顔を歪めた。
ドコとドコだって!?
「な…っ、友クンも保健室の先生と同じようなこと言う気!?」
先生が“大したことない”と言った理由が理解できた。
この女、…ついでに言うとあの男も!鼻と鼻が触れ合ったことをここまでおお事にしてくれたらしい。
オレは唇がふるふると震えた。
この、胸に抱いた心配という感情をどこにぶつければいいものか…!
「誰かとあんな至近距離で向き合ったことなんてないんだよ!? ましてやそれがあの男…!体の震えが止まらないのよ…っ!」
ガタガタと震えながら、葵が両手で両腕を押さえていた。
分かるけど、けど…っ!
この感情をどこにぶつけていいのか分からねぇ…!!
指先を震わせながら、葵と向き合った。
でも、ここで怒ったところで何も解決にはならねぇ。
確かにレオも“触れ合ったらしい”と言ったけど。
(こんなオチって…)
考えれば馬鹿らしくなって力が抜けた。
先生の座る回転椅子にぐったりと体を埋めた。
「そーだな。葵にとっちゃぁ確かに一大事だ。でもよかったじゃん。鼻と鼻で。口と口じゃなくて」
感情のこもっていない口調で言うと、泣き顔だった葵がキッと目元をいからせた。
「何よ!その言い方!」
「だって、そうだろ!鼻と鼻なんて…。マジで心配して損した」
「…ああっ!どうしよう。これからどんな顔してアイツと向き合えばいいのよ…!会長の耳に入ってたら、どうしよう…。ねぇ他の人たち、気付いてた?」
葵の瞳に見つめられ、オレはゴクリと喉を鳴らした。
他の誰も、葵と西の“鼻”がぶつかっただけなんて思っていない。
みんな、二人はキスしたと思っている。
だから会長の耳に入るとしたら、葵と西がキスをした。という内容だろう。
これを今、ここで言うべき、か?
言ったら保健室から出ないと言い出すんじゃねーか?
「ねぇ、友クン!」
葵がオレの体を揺すった。
ごくりと喉を鳴らし、葵を見つめ返した。
「実は……、そのー…」
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