求愛サイン

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「キスされてもどうもなかったんだ?」 その強気な瞳が、オレを見下ろす。 孤高な色を浮かべ、偉そうな表情が今はこんなにも素敵に映える。 その瞳と向き合っていられないと、さっと視線を逸らした。 「あ、あの時はどうもなかったよ!お前のこと、キライ、だったし…。ひゃっ…!?」 そう言うオレの頬に手を置いて、レオが囁く。 「じゃあ今は?」 甘い吐息が頬をかすめて、ドキドキせずにはいられない。 ギュッと顔は背けたままで、逃げ場のないこの場所で体を固くさせていた。 頬に触れている手のひらが優しくて、息が切れそうになる。 うまく呼吸が出来なくて、この場に立っていられなくなって、もうどうしていいか分からない。 「い、今は…っ」 1つ1つに大きく反応する。 目の前がチカチカする心地がした。 瞬きが速まって、呼吸も速まって。 ごくん、と生唾を呑んだ時、レオが言った。 「目を見て言って」 「!」 頬に柔らかな感触がして、一気に視線を持って行かれた。 逸らすことさえできなくなる。 その唇が触れると。 トクン、トクン、と胸の拍動を感じた。 微かに震える唇は既に君を求めていた。 触れて欲しくなった。 愛しい君が好きすぎて。 偉そうに笑う小癪なその顔。 だけど求愛サインに溢れる気持ち。 頬を捉えていたレオの手のひらが、オレの首筋に回った。 震える指先でその首筋に手を伸ばす。 背伸びしないと届かない。 ゆっくりと伸ばすとレオはそれを受け入れた。 「す、好きだぞ…っ」 ギュッと目を瞑って伝える。 首筋に抱きつくように、顔だけは見られないで済むように。 ここぞという時に逃げてしまう。 レオは目を見て言って、と言ったのに。 ギュッと抱きつくオレをレオは優しく抱きしめた。 二人の体は思ったよりも太陽の力を吸収していた。 いつよりも熱い体が触れ合う。 だけど冷たい唇が、オレの首筋に落ちてきた。 その感触に、ぴくりと体が反応する。 キスが流れ星のように降ってきた。
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