802人が本棚に入れています
本棚に追加
「………って!! ちょっと待った!!」
割り込んできたその手をギュッと握り、オレは真っ赤になった顔でレオを睨んだ。
こいつ、こいつ、こいつぅぅぅぅ…!!!
学校でコトに及ぼうとしやがった。
体操服の中に突っ込んできた手を、現行犯で捕まえた。
それでもその瞳はしれっとして、こちらを見ている。
「……何で?」
「何で? じゃ、ねーっっ!! ここ、学校だぞ!? つーか今、体育祭だぞ!? 分かってんのか!?」
「ここは学校だし、今日が体育祭だということも分かってる。……別によくない?」
「よくないっ!! こんの破廉恥スケ蔵!!」
「………誰?」
「お前だよっ!!」
くわっと唾をまき散らしてオレは言った。
それでもレオは涼しげな顔を浮かべている。
この男の破廉恥具合にはついていけねぇ。
西と葵が人生最大の問題にぶつかっているであろうこの時に、この男、こんなところでこんなことをしようとしやがった!
「こんなことって何だろ」
「お前が今しようとした、その行為だよっ!!」
「胸触ろうとしたくらいで、何をそんな…」
「しれっと凄いこと言ってんなッ!!」
かっ、と再度唾をまき散らし、オレはレオと一緒に葵たちがいるであおう、美術棟を目指した。
レオはそれでも反省の色を見せることはなく、オレの隣を歩いている。
緑葉が夏の風に揺れている。
それと同じように、綺麗な黒い髪が揺れている。
それをやっぱりドキドキした心地で盗み見する。
好きで好きで好きすぎて、どうかなっちまいそうだ。
さっきだって、このまま流されてもいいかな、なんて凄い選択肢が脳裏をよぎった。
(いかんいかん…)
前髪を触って、自分に言い聞かせる。
「ま、明日かな」って呟くレオには気づかずに。
二人並んで美術棟の前まで戻ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!