求愛サイン

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「………って!! ちょっと待った!!」 割り込んできたその手をギュッと握り、オレは真っ赤になった顔でレオを睨んだ。 こいつ、こいつ、こいつぅぅぅぅ…!!! 学校でコトに及ぼうとしやがった。 体操服の中に突っ込んできた手を、現行犯で捕まえた。 それでもその瞳はしれっとして、こちらを見ている。 「……何で?」 「何で? じゃ、ねーっっ!! ここ、学校だぞ!? つーか今、体育祭だぞ!? 分かってんのか!?」 「ここは学校だし、今日が体育祭だということも分かってる。……別によくない?」 「よくないっ!! こんの破廉恥スケ蔵!!」 「………誰?」 「お前だよっ!!」 くわっと唾をまき散らしてオレは言った。 それでもレオは涼しげな顔を浮かべている。 この男の破廉恥具合にはついていけねぇ。 西と葵が人生最大の問題にぶつかっているであろうこの時に、この男、こんなところでこんなことをしようとしやがった! 「こんなことって何だろ」 「お前が今しようとした、その行為だよっ!!」 「胸触ろうとしたくらいで、何をそんな…」 「しれっと凄いこと言ってんなッ!!」 かっ、と再度唾をまき散らし、オレはレオと一緒に葵たちがいるであおう、美術棟を目指した。 レオはそれでも反省の色を見せることはなく、オレの隣を歩いている。 緑葉が夏の風に揺れている。 それと同じように、綺麗な黒い髪が揺れている。 それをやっぱりドキドキした心地で盗み見する。 好きで好きで好きすぎて、どうかなっちまいそうだ。 さっきだって、このまま流されてもいいかな、なんて凄い選択肢が脳裏をよぎった。 (いかんいかん…) 前髪を触って、自分に言い聞かせる。 「ま、明日かな」って呟くレオには気づかずに。 二人並んで美術棟の前まで戻ってきた。
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