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テントに戻って、いないその姿を探す。
「あれ、葵は?西は?」
「まだ見つからないの!? 帰ってきてないよ!?」
八重子と七海が目を見開いた。
「え゛っ!? まだ、帰ってきて、ない…?」
「うん!友くん達も帰ってくるの遅いし、心配してたんだよ!? もう、体育祭も終わっちゃうのに…」
二人が顔を見合せて、困った顔をした。
オレもそれに負けず劣らず、困惑した表情を浮かべた。
もしかして、まだ、美術棟の近くにいた…のか?
「どうしよう!? 探しに行く!?」
靴を履こうとした八重子達を見て、レオへと視線を流した。
レオはそれをNOとする。
小さく首を振ったので、オレはますます困って八重子達へと視線を戻した。
「あっ!八重子!」
そこで苦肉の策を思い付く。
携帯を取り出して、メールがきているふりをする。
「今、メールきた!心配しないでって!大丈夫ってメールが来た!」
「ホント!? 今、どこにいるって?」
「……え゛」
そこまで思いつかなかった。
ど、ど、どうしよう…!!
「大騒ぎになってたから、職員室に避難してるってさ」
「!」
すると、オレの横から携帯を見つめるふりをするレオがそう言ってくれた。
それを聞いて、八重子と七海がホッと息をつく。
オレも内心、ホッと息をついた。
もっともらしい嘘がこの場を和やかにさせた。
体育祭のプログラムは、残り応援団の応援合戦を残すだけだった。
レオと無言で見つめ合い、オレは不穏な動悸を感じていた。
「オレ、ちょっと探してくる!!」
「っ友…!」
レオの声にも立ち止まらず、オレは再び大きく走り出した。
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