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西の顔を見て、先生たちは目を丸くした。
閉会式が始まる中、西だけが裏に呼ばれることになった。
葵も当事者のはずなのに、西はそのことを言わなかった。
口を挟もうとした葵に西は何かを呟き、葵はグッと手に力を込めた。
そしてオレと一緒に閉会式に参加することとなった。
「葵…、何があったんだ…?」
こそりと葵に問う。
葵は渋るように、目を伏せてオレへと少し体を向けた。
「……アイツと話をしてたら…。突然他校の奴らがやってきて…」
「他校!?」
「うん…。多分どこかで、一度声かけられたことがあった人たち。体育祭、見に来てたみたい…」
「マジかよ…!どこ高の奴らだ!? マジで許さねぇ…!」
「友クンやめて。…それでね。アイツが…」
「こら、私語はやめなさい」
「――!」
葵がそこまで言いかけて、傍にいた先生に注意された。
パッと振り返ると、先生の力強い瞳。
オレは軽く会釈をする形で、それを受け入れた。
話はそこで一時中断となった。
葵との会話は止まったまま、体育祭は終わった。
宮古の片づけの指示を聞いて、整列した集団がバラけ始める。
それと同時に、みんなの好奇な瞳が葵に向けられる。
それから守るように、オレは葵の腕を引いた。
「西の、様子を見に行こう!」
「え、ちょ…っ」
葵の返事なんて聞かずに引っ張った。
オレが出来ることと言ったら、これくらいだ。
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