求愛サイン

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葵は少し距離を置いたが、西の傍の椅子に腰を下ろした。 「先生、この傷、ちゃんと治る…?」 目を伏せて問う姿がやたらと可愛い。 オレは開いた口が塞がらず、全身に走ったこの不可思議な感覚を抱きしめるように立っていた。 「…友、友」 「!」 ドアの方へと振り返ると、ドアの隙間からレオの姿が見えた。 オレへと手招きしているレオ。 オレは葵へと振り返り、確認した。 葵は今、西のことで手一杯。 オレがここからいなくなったとしても、大丈夫だろう。 そーっと足を忍ばせて、オレはその隙間から廊下に出た。 ドアを後ろ手で閉めて、目の前にいるレオを見上げる。 「どした?」 「西、大丈夫だった?」 「あ、うん…!ちょっと口切っちゃったみたいだけど、平気そうだった」 「深崎のファンにやられたの?」 「そうみたい。あの時オレがちゃんと確認しとけば…」 「友だけのせいじゃないだろ。俺も確認しなかったんだし」 「……、!」 さらりと紡いでくれたレオの言葉が、胸を締め付けた。 何だか凄く優しく感じて、オレは開いた口のまま、レオを見上げた。 「……何?」 そんなオレに気づいて、レオが訊ねる。 「え、あっ、いや…!何でもない!」 「?」 「それよりも、その!……葵が変なんだ」 真顔でレオに言った。 レオはオレの顔を見て、小さく眉を顰めた。
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