求愛サイン

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結局その日も次の日も、葵からは特に連絡もなかった。 今日はレオとのデートの日。 朝、顔を洗ったオレは鏡の中の自分を見て、ショックを隠しきれなかった。 「ガーン…!! 皮が剥けてる…!!」 鼻の頭の皮が剥けていた。 毎年日焼けしまくって、皮が剥けても全く問題なかった。 だけど今年は違った。 日焼けしすぎないように、と。 皮が剥けることがないように、と。 ちゃんと日焼け止めを塗ったのに。 (全然意味なかったぁぁ…!!) こんな顔でレオに会いたくなかった。 せっかくのデートなのに、こんな顔見られたくない。 「どうしよう…!!」 鼻を隠して打開策を考える。 だけどどうにか出来るものじゃない。 化粧の厚塗り? さすがにそれは嫌われそう。 あああ…どうしよう…! しかし時間は一刻一刻と約束の時間へと近づいていく。 慌てて服を着替え、髪を整える。 鼻の皮は剥けたまま、レオとの約束の時間になってしまった。 しかも、なぜか。 オレがレオの家に行くという、アンチレディーファーストの待ち合わせ。 走ってレオの家を目指した。 今日はボリュームのある、白のフリルスカートをはいていた。 ちょっと可愛すぎるかな、と思いつつも。 可愛いって言ってもらえたらいいな、なんて自分じゃないみたいな考えが脳裏をよぎる。 鼻の皮は剥けてるけど、レオに会えるのは楽しみだった。 レオの家の前につき、オレは鞄の中から手鏡を取り出して、もう一度、鼻の頭を確認した。 やっぱり剥けたまま。 少し落ち込みつつも、風になびいた髪を押さえつけて、チャイムに手をかける。 『――…はい』 なんと。 チャイムに出たのはレオ本人だった。
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