求愛サイン

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「どうぞ」 「………っ!!」 そして玄関を開けたのもレオだった。 梅吉さんはどうした! 「……何やってんの?鼻…」 鼻を押さえるオレに、レオが言う。 口調も単調。 表情も無表情。 もっとこう、表情豊かに聞いてくれたら楽なのに!! 「い、いや…何でも…。―――それより!梅吉さんは?……キャッ!?」 話をすり替えようとするオレの腕を、レオが掴んだ。 咄嗟に出てしまった、そんな声にオレはカッと頬を赤らめる。 そしてバッと顔を背けた。 「み、見んな…っ!!」 どうせすぐバレることだけど、少しでも先に延ばしたかった。 それが女心ってもんだろう? 「その鼻…」 「っ」 デリカシーのない言葉が飛んできそうで、オレはキッと覚悟を決める。 ギュッと瞑ったまぶたのまま、レオに叫んだ。 「わ、笑いたかったら笑えよ、このやろーッ!! 日焼け止め塗ったのに意味なかったんだっ!!」 「そんな顔、毎年見慣れてる。今更気にすることなんてないだろ。ほら、早く上げれよ」 「……っ!」 素っ気なく言われて、オレは口を噤んだ。 言われてみればそうでした。 毎年いつも鼻の皮剥けした顔を、こいつにつき合わせていたんでした。 「友も女の恥じらいってのが出てきたんだ?…やっと」 「や、やっと、は余計だよ!」 「そう?」 レオの小さな笑みを感じて、オレはそれだけで嬉しくなる。 レオの後を追って階段を上がった。 二人でレオの部屋に入る。 それでハッと気がついた。 「あれ!今日はどっかに遊びに行くんじゃないのか?」 それは部屋のドアがパタリと閉まった瞬間だった。
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